店舗物件には大きく分けて『居抜き物件』と『スケルトン物件』の2種類があり、それぞれ以下のような特徴やメリット&デメリットがあります。
飲食店の開業で最も選ばれている店舗物件です。居抜きとは、前テナントが利用していた厨房機器や電気・ガス・水道などの設備をそのまま利用できる物件のことで、特に前テナントと近いコンセプトの店舗をオープンさせる場合などに大幅に費用を削減することができます。
大体の設備が残っていて内装工事を必要最低限におさえることが出来るため、少ない初期投資で開業することができます。またオープンまでの期間が短くて済む場合が多く、なるべく早くオープンしたいと考えている方には最適な選択肢といえます。
居抜き物件の場合は、物件契約時に前テナントからの設備や機器を買い取るという意味合いで、前テナントオーナーに支払う『造作譲渡料』が発生します。造作譲渡料は『以前経営していたテナントから店舗内外の造作物および設備・備品を引き継ぐのにかかる費用』であり、約100万~250万の間で取引されることが多いです。
スケルトンは店舗内の床・壁・天井・内装などが何もない『建物の躯体だけの状態』のことであり、スケルトン物件は内装設備がない状態の物件のことを指します。居抜き物件の反対の意味として使われることが多いです。
店舗の設備やデザインを1から自由に作ることが出来るため、時間や資金にある程度余裕があれば自分の思い通りの店舗を作ることが出来ます。
スケルトン物件の場合、内装設備や厨房機器などをゼロから自分で調達する必要がでてくるため、居抜き物件に比べて内装工事に時間や費用が多くかかることになります。
ここからは飲食店の開業をする時に圧倒的に人気な『居抜き物件』について、店舗物件を選ぶ際のポイントを紹介していきます。これらの項目について理解し、コンセプトにあったものを選ぶことで店舗物件のミスマッチを減らすことが出来るでしょう。
はじめに、居抜き物件の契約形態を選びましょう。居抜き物件の契約形態には主に以下の3つがあります。
転貸(サブリース)とは、物件の賃貸借における契約形態のひとつで、不動産会社(サブリース会社)が物件オーナーから借り上げて、その物件を借りたい人に又貸し(=転貸)する契約のことです。その為、借主は物件オーナーと直接契約を結ぶのではなく、物件を借上げている不動産会社(サブリース会社)との間で契約を結ぶことになります。
無償貸与はエアコンやトイレなどの造作物が残置され、賃貸借契約を結べばそれらを無償で利用できるという契約形態のことです。この場合、造作物に関する特約が設けられるケースもありますが、基本的には通常の賃貸借契約と同様の内容になります。ただし注意してほしいのは、造作物や設備の所有権は貸主にあることが多く、それらを無償で貸し出している状態にあることです。
店舗譲渡(造作譲渡)は前テナントが施工した造作物や設備の所有権を次期テナント(借主)が有償で譲り受ける契約形態のことです。
店舗譲渡では店舗区画を借りる為の賃貸借契約に加えて、造作物を引継ぐための店舗資産譲渡契約(造作譲渡契約)を締結する必要があります。これを締結することで、造作物や設備の所有権は次期テナント(借主)に移る点が無償貸与との大きな違いです。
これら3つの契約形態から、自分の店舗のコンセプトや資金と照らし合わせて適切なものを選びましょう。
続いて、店舗物件に必要な電気容量を満たしているか確認しましょう。飲食店の運営に必要な電気容量をみる際には、主に以下の2つを確認してください。
電気の供給の仕方には『単相2線式配線』と『単相3線式配線』の2種類があり、これらは建物に取り付けてある電力量計(電力メーター)で確認することができます。単相2線式配線と単相3線式配線の特徴は以下の通りです。
単相2線式配線 | 100Vのみ使用可能。30Aが上限。 |
単相3線式配線 | 100Vの設備でありながら200Vも使用可能。容量の大きな電気機器にも対応。 |
そのため、業務用エアコンや大型冷蔵庫、スチームコンベクションオーブンなど電力消費量の高い電気機器を使う飲食店の場合、電力メーターが単相3線式配線であることは必須条件となります。
契約しているアンペアがいくらであるかも重要です。以下はあくまで目安ですが、業態別に必要とされる契約アンペアです。
電流(A) | 例 |
---|---|
30A-家庭用 | 一般家庭 |
40A-家庭用 | BAR、カフェ、寿司など |
50A-飲食用 | 和食・イタリアン・フレンチなど |
60A-飲食用 | ラーメン・中華料理など |
想定している業態によって必要なアンペアが大きく異なりますので、後から『電気容量が足りない!』とならないようにしっかりと確認しましょう。
続いて、店舗物件に必要なガス容量を満たしているか確認しましょう。ガス容量の新設・変更には大がかりな工事が必要になるため、特に慎重に選びたい項目です。
ガスの号数(容量) | 例 |
---|---|
4~6号 | カフェ、BAR、小料理、寿司など |
6~10号 | 居酒屋、洋食・レストラン、和食など |
10~16号 | ラーメン、焼肉、中華料理など |
例えば、中華料理店を出店する予定だったけれど目当ての物件のガス容量が6号だったという場合を考えてみましょう。その場合はその物件を諦めるか、ガス工事をするかの選択に迫られます。
しかし、お金をかければどんな物件でも工事が可能なわけではありません。ガス容量に対して配管の太さ(径)が足りていれば、ガス会社に工事を依頼し増設の工事をすることが出来ます。
しかし、配管の太さが足りていない場合、物件を諦めるしかなくなるのです。後になって『希望の物件のガス容量が足りない!』とならないためにも、物件探しの段階からガス容量はしっかりと確認しておきましょう。
居抜き物件はスケルトン物件に比べて、厨房機器などを新たに買い足す必要がないため圧倒的に初期投資を抑えることができます。しかし、不要な機器がある場合や内装イメージがまったく異なる場合は、不用品の廃棄料が別途かかるなど費用がかさむ可能性があります。
そのため居抜き物件で初期投資を抑えるためには、お店のコンセプトと照らし合わせて不要な設備がないか等の確認も大切です。
いかがでしたか。飲食店開業に際して店舗物件を選ぶときは、多くの方がなるべく理想どおりの店舗物件でかつ初期投資を抑えたいと考えると思います。
本記事で紹介した内容にそって選んでいけば、後から想定外の工事で費用がかかったり、イメージと違う店舗になってしまったという事態を防ぐことが出来ます。飲食店開業の店舗を検討している方は、是非参考にしてみて下さい。